本屋大賞受賞作!不登校児母が『かがみの弧城』を推す4つの理由
子育てをするようになって、小説を読まなくなってしまいました。
最も大きい原因が一気読みしたくても子どものあれこれで時間が細切れにされることが必至だからです。
ところが。
今年のGW、2日だけ終日ほぼ自由時間という日が与えられました。
当日の記事はこちら。
そのタイミングで出会ったこちらの一冊。
今年の本屋大賞を受賞した『かがみの弧城』です。
受賞前から読んだ方の「一気読みしました!」というレビューをちらほら目にしていましたが、受賞によってメディアや書店での露出も増えました。
そして何よりメインテーマが不登校の子どもなので、そういった視点からの記事も目にするようになり、不登校新聞には著者の辻村深月さんのインタビューも掲載されました。
これはもう、運命としか言いようがない!!
というわけで、私も一気読みしちゃいました。
こんなにちゃんとした小説の一気読みは、本当に長男が生まれてからはじめてです。まさに9年ぶり。私の中で\横浜優勝/みたいな盛り上がりです。
公式あらすじはこちら。
あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。
『鏡の中の世界』といえば
仮面ライダー龍騎。
まあ、そうなりますよね。特撮おたくだもの。
浅倉威みたいなのが出てきたりメンバーの誰かがガードベントさんになっちゃったら心臓に悪いなとか思ったんですが、大丈夫でした。(当たり前)
その後も私の頭の中で龍騎とかディケイドあたりが変身しているんですが、そんな雑念も抑え込み(笑)、さらに某エニグマ事件も乗り越え、無事?読み終えました。
そんな私がこのような理由でおすすめします
ファンタジーだけど、身近
鏡の中の世界と現実世界を行き来する主人公たちを追うストーリーは典型的なファンタジー。
だけど、現実世界でのできごとも鏡の中のできごとも、その中に私たちがみんな通った思春期の繊細な気持ちがあざやかに描写されていて、ものすごくリアル。リアルだけど、それがちまたにあふれる青春タッチってわけじゃないところがいい。
辻村さんが「子どもとかつて子どもだったすべての人に向けて書いた作品。」と語っている通り、乳幼児以外ならみんな何かの記憶をリンクしてこの世界観に入り込めるのです。
たんなる不登校の問題提起本じゃない
周りの大人たちが不登校の原因を探って「ケンカが原因」「いじめが原因」などと口にしていくことを、主人公のこころは
「そんな言葉で片付けないでほしい」
と考えています。
確かにこの本は不登校の子どもの背景やその気持ちを代弁しているような描写が多く、不登校の当事者や周りの大人たちも共感できたりすると思います。
でも、社会にいる不登校児についての傾向と対策としての参考書として読むものじゃないとも同時に思えました。この小説で、何が正解か?なんて考えるのはそれこそ野暮ってものです。
不登校の子どものストーリーと聞いて読むのをためらっている当事者の親にもおすすめできる理由はここです。
これは私が読む前に
「今度読みますー」
と知らせた知人のみなさんからいただいた
「そういうの考えずにストーリーに入っていけるよ」
というアドバイス通りだったのです。
ただ、クラスに不登校の子を抱えてただただ焦れている先生などには是非参考書にしてくれと思いますが。読みませんかね、そういう方は。
それぞれが、それぞれの立場で読める
辻村さんご本人が寄稿された
の文中で、友人から
「あの本を書いてくれてありがとう」
と言われたことを書かれていました。
その方は3人の小さい子のお母さんなのだそうですが、お母さん(その子たちのおばあちゃん)を亡くし、自分だけでなく子どもたちが身近な人を亡くしたことによるショックを心配していたのだそう。
その中で彼女を救ったのが、小説の文中に登場する
「大丈夫だから、大人になって」
という言葉だったのだそうです。
辻村さん本人も書かれていますが、この言葉は全く別の背景で使われています。
それでも、誰かを救うことができた言葉になったのです。
世代とか性別とかを越えたところで、いろんな人を救う言葉が散りばめられているのが『かがみの弧城』だと思います。
純粋にストーリーを楽しむだけでもいいんです
ストーリーのつくりもしっかりしているので、大きく身構えてレッツ共感!みたいなのを求めなくても楽しめます。
着地点はおおよそ予想はつくのですが、そこに至るまでの展開やどのように着地するのかも含めてミステリーファンも、そしてフラグ回収大好きなニチアサ民のような人たちもニッコリの内容です。
そして当然、ファンタジー好きも。表紙のジャケ買いの方も決して裏切らないと思います。
読後はそこを語るもよし、薄い本作りたくなるもよし。(いやそれはどうだろ)
とにかく、読んでよかったといいますか、これ平常運行で細切れで読まされたらストレスたまっちゃいそうでした。(笑)
みなさんも、没頭する時間を作れる方、そしてあえて作りたい方は是非積極的に時間を作って読んでみてください。
かがみの孤城 (一般書) [ 辻村 深月 ]
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